2010年1月12日火曜日

一本とられた話

電車の先頭車両の一番前の席は、うちらのギョーカイでは「自閉席」と呼ばれている。

自閉症(スペクトラムも含めて)の人が、この席に座っていることが多いからだ。
かくいう私も先頭車両が大好きで、10回電車に乗るうちの7~8回は乗っている。
たぶん、私にもある部分スペクトラム的な要素があるからだろう。
けど、自閉席にはめったに座らない。
もっと色の濃い人に譲るためです。

で、話は、この間の日曜日である。
免許更新のために、二俣川という町に出かけた帰り。
横浜から電車でK浜に向かって帰る途中。

結構時間があったので、普通電車乗った。
何を隠そう、私は快特や急行よりも、普通電車の方が好きなのだ。
時間があれば、好んで乗る。
そして、いつものように先頭車両に乗った。
普通電車は、普通、空いている。
けど、その日は妙に混んでいた。
で、私が嫌いな「小学生の群れ」が、たくさん乗っていた。

私は「知らない子」が嫌いだ。
教員のくせに、である。
もう一つ言っておくが、「知っている子」で嫌いな子は1人もいない。
つまり「知らない子は全員嫌い」で、「知っている子は全員嫌いではない」のだ。
つまり、初めて会う子どもは「全員嫌い」なのだ。
何一つ矛盾はない。

話を元に戻して、その日の先頭車両には、大っきらいなガキんちょがたくさんいた。
とある駅に着いた時、自閉席に座っていたおばあさん(この人は別に自閉症ではない)が降りようとした。
すると、ガキんちょの何人かが、われ先に自閉席に座ろうとしておばあさんを押しのけるという狼藉に出た。
おばあさんも周りの大人(私も含めて)も「なんちゅうこと、すんねん。このガキ!」と心で思いつつも、コトを荒立てずに見過ごそうとしたその時である。

「こらあ、静かにしないとダメだぞ。周りの人に迷惑だぞ。」
ど真ん中、直球の叱責。
全然気付かなかったけど、自閉席に本物の自閉症の人が座っていて、この人が叱責の主だった。
ガキんちょも、びっくりして、
「あ、すみません。」
と神妙にしている。

「こらあ、静かにしないとダメだぞ。周りの人に迷惑だぞ。」
さすがに自閉症だけあって、謝っているガキんちょにお構いなく何べんも同じ叱責を繰り返していたけど、完全に一本とられました。
周りの大人たちも全員、「一本とられた」と思っていたはずだ。
彼の行動の方が、当然あるべき「大人の姿」だからである。
その行動は、尊敬に値する。

「自閉症は社会性の障害だ」といわれている。
けど、自閉症の人の方が明らかに社会的に正しい行動をして、自閉症でない人がそれをしないとしたら、社会性っていったい何じゃ!
と、自分にとても腹を立てながら、思った出来事でした。

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by tensuinoko