2010年1月11日月曜日

論文を書こう!その16

書けた!

(以下の通り)
 これまでに報告された保育士および教員研修の効果査定に関する研究を概観すると,事後アンケートを用いて効果査定を行ったものが多い(足立・畑山,2006;遠藤・徳田,1996;三井,2001;佐藤,2005)。しかし、これらはあくまで研修会参加者の主観的評価であり,研修効果を客観的に査定するものとはいえない。一方、研修の前後における参加者の変容を明らかにし効果査定を行った研究もいくつか見られるが、それらにおいても知識のみの査定であったり,対照群が設けられていない,研修対象が少数である,査定方法の詳細が明らかでないといった様々な問題点が見られる(後藤・小林・斎藤,2003;小林・後藤・斎藤,2003;菅野・小林,1997;大羽・井上,2007; 志賀,1983;重成・井上・山口,2003)。比較的規模の大きな研修会において,研修前後の参加者の変容をとらえる従属変数を明らかにし研修効果を査定する試みは,効率性と有効性を両立する研修プログラムの開発には欠かせない要件であろう。
 この研究では、保育士の「気になる子どもへの対応力」を「発達障害の特性、指導法に関する知識」「行動分析学に関する知識」「問題行動に対する原因推定と解決策立案の能力」と規定して研修プログラムを作成し、受講生70名程度の研修会を実施した。「発達障害の特性、指導法に関する知識」については、野呂(2006)も指摘するようにその必要性はいうまでもなく、この数年間に保育士や教員向けの書籍が多数上梓されている(例えば市川,2006;佐々木,2006)。また、「行動分析学に関する知識」についても、発達障害も含めて様々な問題を行動の増減という視点から解決に導くテクノロジーとして、多くの参考書が出版されている(例えば島宗,2000;服巻・島宗,2005;山本・池田,2007)。
 「問題行動に対する原因推定と解決策立案」を導く方法として、問題行動の機能分析に基づく積極的行動支援(Positive Behavioral Support)の有効性が報告され(平澤・藤原,2001;平澤・藤原・山根,2005;大石・高橋,2006)、問題行動の生起要因をいくつかの典型的な機能に分類するような研修プログラムも存在する(Iwata,Wallace,Kahng,Lindberg,Roscoe,Conners,Hanley,Thompson,& Worsdell,2000;Moore,Edwards,Sterling-Turner,Riley,Dubard,& Mcgeorge,2002;Magg & Larson,2004;Wallace,Doney,Mintz-Resudek,& Tarbox,2004)。しかし、保育場面で幼児が示す問題行動の原因は多種多重であり機能を分類するような研修では不十分であると考え、今回の研究においてはより広範で包括的な原因推定とそれに対応する解決策立案を促すことを主眼において研修を開発した。
 よって本研究では,保育士を対象とした障害児保育研修会において,「気になる子ども」への対応力として,自閉症およびAD/HDの障害特性と指導法の理解,応用行動分析学の基礎的用語の習得といった知識的な側面と,問題行動のより広範囲で包括的な原因推定とそれに対応する解決策の立案という思考力の側面について、研修目標を受講生の具体的な行動目標として定義し、研修の前後における参加者の変容を定量的に測定する。さらに、効果測定方法の効率性と有効性について検討を行う。
(ここまで)

(次回)
2010年1月17日(日)24:00までに、要約を作成する。

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by tensuinoko