2010年11月29日月曜日

「わかりません」と言うこと

最近,知的障害特別支援学校OBによるミュージカル公演に参加した。
この団体は,研Q所のK先生がライフワークとして携わっているものだ。
とてもすばらしい活動で,20~30代の知的障害のある人たちが,保護者や支援者に支えられながらミュージカルの舞台を作り上げる。
私も,昨年から数度の公演に参加している。

知的障害も決して軽度な人ばかりでなく,たぶん中度,中には重度に分類される人もいるかもしれない。
メインキャストをつとめる人たちは,しゃべれたり歌えたり演技できたりする軽度の人が中心なのだけど。
今回の話は,ミュージカルの練習で感じた疑問について。

指揮をするのはH先生。長年このミュージカルに携わっているプロの指揮者の方。
でも,当たり前だが,決して特別支援教育の専門家ではない。
練習の時には,うまくいかないことがたくさん出てくる。
それは,音楽的なことだったり,演技上のことだったりする。

H先生は,専門家の我々でも驚くほど,知的障害の青年たちにわかる教え方を工夫して伝えようとしている。
しかし,残念ながら,その工夫は必ずしも成功するわけではない。
H先生の努力にもかかわらず,
青年たちはなんべん練習しても,同じところでつっかえたりする。
H先生は,本当に根気よく教える。
そして,最後に必ず「わかった?」と尋ねる。
そして,当事者の青年たちは必ず「はい」と答える。

この「はい」が,とっても疑問。
「この人,絶対わかってないはず。」
直感的にそう感じる。
たぶん,特別支援学校の教員だったら,みんな同様に感じるだろう。
案の定,指示された部分は全然改善されない。

「わかった?」と訊かれてもわからない時,
無言であったり,首をかしげたり,困った顔をするのが普通の反応だと思う。
さすがに「わかりません」とはっきり言える人は,少ないと思う。
けど,あの青年たちは,わからないはずなのに,何故「はい」と言ってしまうのだろう?

A:「わかった」と訊かれた時,(実はわからない)
B:「はい」
C:?(↑)

という強化随伴性が推定され,このウラに,

A:「わかった」と訊かれた時,(実はわからない)
B:困った顔をして,首をかしげる
C:?(↓)

という弱化随伴性も推定される。
こう考えると我々の身の回りにも,よく似たABCがある。

A:「何か質問がありますか?」と訊かれた時,(実は質問がある)
B:挙手する
C:?(↓)

「?」には,いろんな事柄が入りそうだ。
「?」に当てはまりそうな事柄をできるだけたくさん書き出すと,
学校教育で中軽度の知的障害の人たちに「教えるべきこと」や「教え方」が見つかるかもしれない。
最近,考えさせられたことでした。
つづく

0 コメント:

by tensuinoko